デジタルカメラやカメラつき携帯電話が広く普及し、“一億総カメラマン”ともいわれる時代を迎えています。
周囲を見渡せば、人物、建物、乗り物、食べもの、風景など被写体がいっぱい。
何を撮るか、どう撮るかはもちろん自由ですが、どうせ撮るなら素敵な写真を残したいものです。
そこでこの道30年のベテランフォトグラファー・山田浩一郎さんにお付き合いいただき、
東京下町撮影散歩を楽しみながら、初心者でも上手に写すポイントを教えていただきました。
山田浩一郎氏 PROFILE
東京写真大学(現東京工芸大学)写真技術科卒業後フリー。
主な撮影フィールドはスポーツ、舞台、広告全般。
JPS(日本写真家協会)会員。
JGPS(日本ゴルフ写真家協会)会員。
撮影の基本は、なんといっても姿勢です。
次のポイントをおさえましょう。
①背筋を伸ばす
②足を軽く開いて脇を締める
③カメラを両手でしっかり構える
④塀や柱などがそばにあれば、それらに体を預ける。
これらを守ると安定感が増して手がぶれる現象(手ぶれ)も防止します。
グリッドラインとは、撮影時に水平、垂直を測ったり、撮影目標となる被写体の配置の目安にするタテ・ヨコの格子状ラインのこと。撮影に慣れるまではこれを表示し、ラインの交わる場所に被写体の中心を持ってきたりすると、構図をつくりやすくなります。
必ずしもではないのですが、いわゆる良い写真を撮るためには朝か夕方の撮影がおすすめです。光が横から当たるこの時間帯は、日の影が利用でき、被写体を立体的にとらえやすいからです。
今回の撮影散歩のスタートは、浅草雷門です。この日は素晴らしい秋晴れ。しかも暖かいとあってかなりの人出。なかでも絶好の撮影スポットである雷門前の混雑は相当なものです。こんなときは焦らずのんびりとシャッターチャンスを待ちましょう。
<記念写真でよくある失敗例>
背景を全部入れようとして人物が小さくなってしまう。
<回避策>
人物の立ち位置をカメラに近づけ、上半身だけを切り取り、表情を上手にとらえる。
雷門をあとにして、次はスカイツリーをめざすことにしました。我々の脇を颯爽と駆け抜けて行った浅草名物の人力車を撮影しました。
<撮影方法>
太陽を正面にして撮る、逆光といわれるアングルを利用。
<結果>
力強く駆ける様子が表現できる。
スカイツリーへ向かう途中の橋からは隅田川を行き交う水上バスや屋形船を眺めることもできます。こうした船を格好良く写すためには、バランスを考えてみましょう。
①グリットラインを使って、遠くに見える橋が水平になるようにカメラを構える。
→橋が水平になることで、船の動きが際立つ。
②画面上で川側が3分の2、空側が3分の1の比率になるように調整。
→画面を上中下の3つに分け、背景や被写体に入りこむ比率を考えることにより、バランスが整う。この手法を「3分割構図」という。
次は少し離れた場所からスカイツリーのような大きな建造物を撮るケースです。これはスカイツリーを望みながら高架線を走る東武特急と組み合わせた作品です。
<撮影方法>
手前に高い建物を入れず、地上からカメラを空へ向けるような構図にする。
カメラを構えたらスカイツリーが完全に垂直になるようにグリッドラインで確認。
<結果>
スカイツリーの高さが強調できる。
次の撮影ポイントを探して行ったり来たりしていると、電車のガード下で茶屋を見つけました。いまは閉店してしまっていますが、懐かしさの漂う外観は魅力的。思わず写してみたくなります。
<撮影方法>
斜めから撮る。
<結果>
立体感が出る。
散歩をしながらほどよい場所を見つけたら、人物写真にも挑戦しましょう。人物を撮る場合、一般的に逆光は良くないと思われがちですが、意外にも山田さんは「人物こそ逆光で撮ってほしい」と言います。
<撮影方法>
フラッシュを使う。斜め下から見上げるように撮る。
被写体となる人には背筋を伸ばし、つま先を少し外に向けてもらうと良い。
<結果>
体型がより美しく写る。
<撮影方法>
植物の色や形が際立つ距離まで近づく。焦点(ピント)をしっかり合わせる。
光の向きや風による揺れに注意。
<結果>
背景がほど良くぼけて植物が際立つ。